こんにちは。
神主がもっている道具の中で、一番象徴的なものが「笏」だと思います。
基本的に祭祀を行っている際は、神主はこの「笏」を持つものです。
この「笏」ですが、先輩神職から聞いた話では、もともとは「剣」だったそうです。
「剣」を持って、自分の力や権威を周囲に示していたそうで、やがてそれが木製や象牙の「笏」へと変化していきました。
ではそのもともと持っていた人たちというのは、誰かと言えば、大陸の人たち(今でいう中国・朝鮮半島の人たち)です。
神社の神主というのは、一見すると、純和風といったイメージだと思いますが、
神道のような、日本の文化は、大陸の文化の影響を大きく受けて、
それを自分たちなりに、「形」や「意義」を少しづつ変えながら、取り込んでいったわけです。
ではそれまで自分の力や権威を示すために持っていた「剣」(やがて「笏」)ですが、
今の神職が、同じように自分の力や権威を示すために、この「笏」を持っていると思いますか??
とんでもありません!
この「笏」は、「自分正す定規」と言われています。
心が乱れていれば、笏は前に倒れたり、後ろへ反ったりするそうです。
だから、この笏をいつも垂直に立てて、神様の前に立つときには、この笏と同じように心を正すべき。と教わるのです。
権威を示すものから、己を正すもの、つまり、笏という「形」は同じであっても、
その「意義」が真反対になって、今日に伝わっているわけです。
繰り返しますが、私たち日本人は大陸の文化の影響を大きく受け、
それを柔軟に取り入れてきました。
なぜそんな事ができたのでしょうか?
その答えが「神道」です。
神道は「神を祀る」という祭祀の側面があると同時に、
「物事の考え方」でもあるのです。
そして、その神髄こそ、「個々を尊重する」という考え方なのです。
統合神道(←改めて解説します)の立場から言えば、「分離の良い面」に着目しているということです。
だからこそ、日本には八百万の神々というバラバラの個が、それぞれの働きをしているのです。
これと文化の取入れは同じです。
今まで日本にあったものも良い、でも大陸から来たものも良い、それを掛け合わせてできたものも良い・・・
そして、その中からよりふさわしいものを選び使えばよい。
こういうモノの考え方ができるのは、私たち日本人が「神道という空間」に生きているからこそなのです。
これで、日本人の多くが、正月を祝い、クリスマスを祝い、ハロウィンを楽しみ、七夕をやる理由が分かったと思います。
ヨーロッパのように、街並みが統一されず、個々の建物がバラバラのデザインなのに、全然違和を感じない理由が分かったと思います。
ひらがな・カタカナ・漢字・ローマ字の4つの文字を使い分ける理由が分かったかと思います。
私たちは信仰だけでなく、あらゆる面において「それぞれの良い面」を見出す、「神道の目」を持っているのです。
またこのことについては、改めて語りたいと思います。
それでは。