天皇陛下の御装束
こんにちは。
来月22日は「即位礼正殿の儀」という重要な儀式が皇居で行われます。
天皇陛下が「高御座」(たかみくら)という御座にお昇りになり、
ご即位されたことを国の内外に宣明(広く伝えること)される日です。
当日はテレビを中心にこの様子が報道されることでしょう。
この儀式では、天皇陛下や皇后陛下、また他の皇族方はお装束をお召になられます。
天皇陛下はこの時「黄櫨染御袍」(こうろぜんのごほう)という束帯をお召しになります。
この装束の色は、真昼の太陽を表した色と言われています。
恐らく、多くの方が、陛下のお装束をご覧になって、
「うわすご~い」という感想をお持ちになると思いますが、
ちょうど儀式が行われる一か月前の今日に、少し違った見方があることを記しておこうと思います。
私はこの天皇陛下のお装束を拝見するたびに、
「我々と同じだ・・・・」
と思います。
確かに陛下のお装束は精緻に作られ、天皇だけに許された色を使ってはいます。
しかし「束帯」という装束であることには変わりがないのです。
束帯というのは、何も天皇だけが着る装束ではありません。
内裏に上がる(天皇のお側に上がる)際には、みんなこの服を着たのです。
被っている冠だって、瓔(えい)と呼ばれる後ろのヒラヒラが、立っているか、垂れているかしか違いがなく、
素材は全く同じです。
持っている「笏」に至っては、木製のもので、現在神職が持っているものと何も変わりがありません。
ところが、世界の王様は違います。
イギリスのエリザベス女王陛下は金銀にダイヤを散りばめた王冠を被っておいでです。
手には、これでもか!というくらい大きなダイヤが付いた杖も持っておられます。
タイの王様だって、ブルネイの王様だって、正装はキンキンギラギラの御召物をまとっておいでです。
世界各地の王室を戴く国は、こうした王様が立派に光り輝ているお姿をみて、自分の国の勢いというものを実感しているのです。
ところが、日本の天皇陛下は違います。
臣下と形は全く同じ服をお召になります。色は確かに違いますが、これは「役割」を表しているからです。
「私は天皇という日継の位にいる者ですよ。」という「役割」を示しているのです。
被っている御冠には金銀・ダイヤどころか、銅・真鍮さえもありません。布、漆、木、針金くらいです。
なんで世界の王様たちと、日本の天皇陛下はこんなに違うのでしょうか?
答えは簡単です。
「神主」だからです。
天皇はご自身の祖先である神々に仕えておられるのです。
誰だってそうだと思いますが、
神様の前に立った時、
自分はこんなにすごい人間で、こんなにたくさんすごいものをもっていて、とっても力のある人間なんです!
なんて言いますか??
神の前では「誰だって」、「謙虚」でなければならないのです。
天皇だろうが、お公家さんだろうが、将軍さまであろうが、みんな等しく神様の前に立つときは同じなのです。
(ちなみに神主の「衣冠」という装束も、この束帯を略したものです。)
だから、天皇も「束帯」をお召になるのです。
国のトップが率先して飾りを捨てる。
これが日本のすごさだと私は思っています。
来月の即位礼正殿の儀がつつがなく行われることをお祈りしています。
令和という新しい時代が、陛下の御召物のように「太陽が光輝くような」時代でありますように。
それでは。